VOL.11

2024.03.15 FRI.

神戸チャイハーネ

アシュレイ
ホームストア

1945年にアメリカで創業。2006年度から連続で全米家具売上高No1の実績を持ち、現在世界に1000店舗以上を展開している。いかにもアメリカンでトラディショナルなものから新しいトレンドまで多様なスタイルの商品をラインナップ。ランプやラグ、絵画などインテリアのアクセントとなる小物も豊富に揃っている。

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インテリアコーディネーターとしての“プロの目、プロの技”。本日はそんなテーマでお話をお聞きしたくて、お店へとやってきた。職人さんやシェフなら材料や道具を選ぶ目、玄人にしかできない技術などがあるだろう。と、わかりやすい想像力が働く。インテリアコーディネーターという職業では、それはどういうことになるのだろう。さて、どんな話が飛び出すか。ご期待ください。

インテリアコーディネーター
田中素子 さん

大学在学中に1年半アメリカに留学。貿易専門職を長く経験した後、現職に就く。インテリアコーディネーター・輸入貿易担当。

映画で観た、あのベッド。

ベッドに関する希望の中で多いのが、“あの映画、このドラマに出てくるようなヘッドボードの高さのベッドがほしい”ということらしい。やはり、そこには現実の日本の暮らしの中にはないような、憧れのベッドがあるのだ。そこで眠りたいという夢を見せてくれるベッドということでしょうか。それ以外の希望でも“海外のホテルのようにマットレスを高い位置にセットしたい”という声もよくあるとか。ある意味それはアメリカンライフの象徴ともいうべきアシュレイホームストアの家具への希望らしいなあ、と言えるかもしれない。

夢や希望を叶える、それこそプロの目、プロの技。

田中さんによると、海外の映画やドラマで目にする、あのベッド。それを、日本家屋でも実現させますよ、というのが、インテリアコーディネーターとしてのプロの目であり、プロの技になる。
キングサイズの大きなマットレスだと、まず搬入経路が難しい。その場合はセパレートタイプのマットレスと言って分割できるマットレスに代えるそうだ。なるほど、なるほど。そんなことを知らなかったら、マットレスを縦にしたり斜めにしたりして、なんとかドアから入れようとしますもんね。で、結局、ドアから入らないので窓から入れようかとか、ドアを切っちゃえとか(笑)は、まさかできませんよね。

今日はじめて分かったこと。海外ドラマなんかで靴を履いたままベッドにダイブするシーンがありますよね。あれは、アメリカが土足文化だからだろう。ここまでは想像がつきます。でも、この靴を履いたままのダイブとマットレスの高さには、じつは意外な関係がある。室内でも靴を履いたままなので、マットレス面をできるだけ床から上げると清潔だという考え方がアメリカには定着しているのだとか。そして、昔はそれを実践しているひとほど、高貴な生まれといわれたそうだ(じつは、諸説あるらしいので、一説にはというニュアンスらしいけど)。
睡眠は大切。ひとは、1日のうちの多くの時間をベッドで過ごす。自分が望むようなベッドで眠ることで、よりリラックスした眠りの時間を過ごしてほしい。できる限り、お部屋の窓の位置や大きさに対応しつつ、導入したあとの生活に無理のない動線を考えながら提案するのがプロだ。だから、素人にあるあるの、クローゼットの開きがベッドに当たり、“開かずのクローゼット”になるようなことはありませんよ(笑)。と、笑いの中に自信の表情を浮かべる田中さんでした。

“アメリカの家具なのでアメリカの文化を体現してほしい”と、田中さんは言う。高さや広さなど、日本の家屋では問題になることも多いかもしれない。でも、まずは相談してみることだ。答えはプロが出す。そこにプロの目があり、プロの技がある。素人が答えを出そうとするのはケガの基。素人は夢や希望をちゃんと伝えることが役割。そういうことを学んだインタビューでした。

インタビュー&ライティング 田中有史

石田洋服店

大丸インテリア館
[ミュゼエール]

心斎橋、梅田、神戸、京都。大丸松坂屋百貨店各店の家具ショールームとして位置付けられた店舗。「居心地の良い美術館のような空間」をコンセプトに約4,000平方メートルの広い空間に、国内外の一流ブランドが揃っている。その中で、最近の人気は北欧家具とか。

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とにかく広い。歩けば、どこかで世界の有名家具と出会う。「おっ!」「えっ!」「あっ!」の連続である。家具好きなら、喉から手が出るほどほしいものが、あちこちに置いてある。これは、たまりません。まさに家具の美術館。美術館と違うのは、ここでは、これらが買えるということだ。
この道35年の小林さん。前回は椅子フリークの誰もが憧れる超有名な椅子を紹介してくださった。今回は、あれ以上のものが出てくるのか。はたまた、違う角度からの面白い話を聞けるのか。ワクワクのインタビューのはじまり、はじまり。

MD担当 小林昭彦 さん

大丸神戸店の家具売り場に配属以来、家具に携わって約35年。家具のスペシャリストといえる超ベテランである。約20年前の大丸インテリア館[ミュゼエール]の立ち上げから、神戸ファッションマート店に在籍している。MD担当としての豊富な経験をいかし、商品揃えや仕入れなどを取り仕切っている。

日本流にアレンジしたドイツの逸品。

小林さんが今回ご紹介してくださったのは、ドイツの「エルポ」というブランドだ。残念ながら、その高名を存じ上げていなかったが、創業70年を迎える、ドイツが世界に誇る高級ソファブランドだ。
同社があるのはバーデン=ヴュルテンベルク州。シュトゥットガルト近郊のエルティンゲンという町だ。バーデン=ヴュルテンベルク州はポルシェ、メルセデス、ボッシュなど世界的なブランドの創業の地として有名である。エルポはドイツ産の原材料のみ(皮を除く)を使用することにこだわり、ドイツ国内の自社工場で生産しているという。エルポは大規模なメーカーであるにも関わらず、マイスター気質に溢れる。妥協を許さないハイグレードな製品づくりに徹しているとか。
今回ご紹介いただいたソファは、小林さん自身が実際に渡独し、工場と直接打ち合わせをして完成させた。

日本初登場のモデル、
しかも20色のカラーから好きな色を選べる。

「ミュゼエール オープン20周年記念オリジナル企画」と銘打たれた、総牛革張りの「Cuneo」、布張りの「Avignon」。日本国内初登場モデルで、しかもカラーオーダーができるというのが売りだ。皮と布の2型×20色から好きなものをオーダーできるのは魅力。幅174cm、奥行き88cmと日本の住宅を考えたサイズ。このサイズなら、日本の住宅でも圧迫感は感じないだろう。2人掛けのデザインだが、3人まで十分に座れるゆとりがありそうだ。試しに腰掛けさせてもらったが、とても座りやすい。先進的な人間工学に基づいた内部構造による座り心地は、ひと言でいうなら“ラグジュアリー”。よく見ると、座面の下と床の間の隙間が広い。これは、小林さんによると、「ロボット掃除機がソファの下にスイスイと入っていけるように」とのことだ。ドイツ伝統の匠の技に、日本らしい細かな心遣い(プロの視点)が加わっている。ここが、日本オリジナルモデルの良さであろう。

ソファと言えば、黒や茶が主流だが、赤や薄いパープル系の色もある。好きな色を選べるだけでなく、個性的な部屋づくりにも一役買うだろう。エルポの皮はすべて、ヨーロッパメイド。店頭に展示されている商品なら即時お買い上げ可能。お好きなカラーを発注した場合は納品まで約6ヶ月。今日か、今日かと待つ時間も楽しみのうちですね。(羨ましい!)

インタビューが終わり、小林さんと横に並びながら、広い店内を出口へと向かう。気になった商品の前に足を止めると、小林さんが速攻で目線の先の商品の説明をはじめる。あるいは、小林さんのこだわりで選んだ商品のそばを通ると、足を止めて商品のことを語ってくれる。本当に、家具のプロだなぁ、と思う。こういう会話も買い物の楽しみの醍醐味だ。家具が好きなら、家具の話も好きなはず。ぜひ、会話も楽しみに訪れてみてください。

インタビュー&ライティング 田中有史

ROKUMORIカフェ

ROKUMORIカフェ

「ひとに優しい材料で、一つひとつ丁寧につくること」をモットーとする。無農薬や減農薬野菜をつかったフードメニュー。人気パティシエのケーキ。厳選した豆からいれるコーヒー。イートインだけでなくテイクアウトも可能だ。店内には「六森」のこだわり家具も置かれていて、オーダー家具の相談はもちろん、リフォームの相談もできる。

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さまざまな木製の家具が並ぶ店内。そこにしばらく腰を落ち着けていると、じんわりと木の香りに包まれていく。この落ち着いた店内に“プロの目、プロの技”というようなトンガリや緊張感の塊のようなものはあるのか?そう思い、キッチンに立つ調理スタッフを眺めてみる。(実際のお話は、調理とかはまったく関係なかった)
話が進むにつれて、稲田さんが言いたいことは、程なく理解できた。なるほど。いつも明るく楽しい話をしてくれる稲田さん。このひとの経験とネットワークこそが、“プロの目、プロの技”だった。

代表取締役 稲田恵美 さん

アパレル会社にて店長と新入社員指導員を約10年。海洋建築専門会社にて経理責任者を約10年。豆雑穀卸し会社にて経理責任者を約8年。家具製造会社ティシュラー夙川店にて責任者を約3年。数々の重責を担った後、ティシュラー製品の販売代理店として独立。令和元年にROKUMORIカフェをOPEN。現在に至る。

リフォームの相談ができるカフェ。

ここのところリフォームの相談が増えている。と、話を切り出した稲田さん。過去3年で1件だったリフォームの相談が、この2ヶ月で6件と言うから、相当な増加率だ。母体は家具のメーカーなので、自ずと家具の相談が家の相談につながっていくようだ。稲田さん曰く「家具屋が提案するリフォーム」なんだそうだ。でも、リフォームそのものを受注するのかというと、そうではない。あくまでも主眼は“中継ぎ”。ひとの紹介なのだ。しかも、じぶんが信頼する“このひとなら” “このひとしかいない”というスタンスでキャスティングしていくチームづくりを基本としている。

「カフェでの話の8割は雑談。残りの2割に本質がある」
これは、名言だ。

カフェでお客さまと話をしているうちの8割は雑談で、相談などの本質は残りの2割。その2割の中から、「どこに困りごとがあるのか」をつかんでいくのが稲田流。カフェでお茶を飲んだり、ごはんを食べながらだと、気軽にものが言いやすいのか、「こんなことできないの?」「こんなことを調べてよ」と、本音の相談が気軽に出てくるという。相談にNGはないという稲田さん。もちろん、相談だけならお金が発生することはない。ひとを動かしてはじめてお金も動く。
「提案させてもらえるだけで良い」。「モノに立脚しないで、ひとを軸にすることで価格競争ではなくなっていく」。先にも言ったが、いままでの経験があるから、「こんなこともできる」分野は思いのほか多岐にわたる。場合によっては、土地だって探せるのだ。
いままでのつながりをいかして、職人は絶対にこのひと。設計はこのひとでないとダメ。と、ひとを紹介していく。このひとでないと安心して依頼できないというプロでないとチームを組まない。このやり方でやるから、間に稲田さんがはいることでチームが“コミュニティの場”になっていくのだ。稲田さんのまわりには、いろんなプロがたくさんいる。とはいえ、誰でも良いというわけではない。稲田さんのこれまでの経験というフィルターを通してピックアップされたプロ同志のつながりが、濃い提案内容となり、安心感を与えてくれるのだろう。プロたちのコミュニティ。一度、のぞいてみたいですね。
そして、家の話、リフォームの話は楽しくないといけない。そうでないから、精神的にしんどくなってしまって、途中で諦めてしまうひとが多いそうだ。でも、楽しいだけではなく、デメリットもちゃんと伝えるべきだと常に考えている。そこを誤魔化すと、時間ばかりかかって、良い結果を生まない。だから、稲田さんの提案には説得力があるのだろう。説得、納得である。結果、ミニマルな予算で満足してもらえて、お得になるという。

いかがでしたか。 “生活の中での何でも屋”と自称する稲田さんの「プロの目、プロの技」。プロの目や技というよりも「プロの心意気」と言い換えても良い話でしたね。リフォームの話をしに、ごはんでも食べに行きませんか。

接客は好き。意図を汲み取るのは得意という稲田さん。「パソコン仕事をするデスクがほしい」と言われたら、「本当にパソコン仕事用のデスクがないといけないのか」から考える。よく考えたら、デスクなんかなくても良いんじゃないのか。デスクがなくてもパソコン仕事ができるスペースがあれば、そのほうが良いんじゃないのかな。と、考える。そんな思考回路の持ち主だから、面白い提案ができるのだろう。

インタビュー&ライティング 田中有史

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