VOL.02

2022.11.04 FRI

石田洋服店

神戸を代表するビスポーク・テーラーである石田洋服店。ビスポークとは“Be spoken”から派生した言葉と言われ、顧客とテーラーが話をしながら注文に応じ好みの服に仕立てていくこと。ここ石田洋服店は、顧客と話すという原点を大切に服づくりと向き合っている。

神戸ファッションマート 1F

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専門的なところを持たないでおこう。
広く浅くでいいじゃないかという
主義なんですよ。

店長 石田原 弘さん

祖父の時代はテーラーを営み、父の代からはテーラーに生地を売る紳士服地の卸売業になったという石田原さん。自身は大学卒業後ヨーロッパで服地を扱う会社に入り、その後総合商社を経て家業である卸売業を継ぎ、現在の小売業(テーラー)となった。まさに紳士服ひと筋の人生を歩んでいる。

―こんにちは、石田原さん。
テーラーという職人的な仕事をされているから、きっと「これぞ、プロの目、プロの技」というお話がたくさんお聞きできるのではないかと、今日はとても楽しみにしてやって来ました。
では、さっそく。石田原さんにとっての「これぞプロ」って、どんなことでしょう。

わたしがテーラーということで職人ならではの専門的なネタや裏話を期待されているのでしょうが、じつはそんなものは何ひとつありません。いきなり期待を裏切ってすいません。(笑)ひとよりも秀でたところなんか、わたしには何にもありません。強いて言えば、根気強いということくらいでしょうか。
テーラーにとって大切なのは、じつは専門性よりも総合力だと思っています。わたし自身はあえてスペシャリストを目ざさないようにしています。素材のこと、生地のこと、縫製、スタイル、服飾の歴史。これだけのことを全部知っているひとはいないんですよ。なんでも知っているって意外と貴重な武器なんです。だから、広く浅くで良いので何でも知っていたいと常に心がけています。
大学でも学生たちには、「広く浅くで良いから、なんにでも興味を持ってなんでも貪欲に知りなさい」と話しています。(石田原さんは神戸松蔭女子学院大学人間科学部ファッション・ハウジングデザイン学科の専任講師でもある)

めざしているのは「街の遊撃手」。
広い守備範囲でどこへでもササーッと動ける存在でありたいのです。

昔、イスズのジェミニの広告で「街の遊撃手」というコピーのCMがあったのを覚えていますか。田中さんなら、ご存知でしょ。(もちろん知っていますとも!ヨーロッパの古い街のロータリーでクルマがダンスするように走るカッコ良いCMでしたよね。そうそう、それです。と、ふたりはそのCMの話で盛り上がる)
あのCMを見て以来、ずっと“遊撃手”になりたいと思ってきたんです。遊撃手はほかの守備の選手のように固定したベースを守る必要がないでしょ。
わたしも遊撃手のように守備範囲を自由にしていろいろどこへでも動いていきたいと思ってきました。じぶん自身は、イギリスとフランスの会社にいたころにいろいろ服地を扱ってきて、その後商社に入り家業を継ぎました。メーカー、商社、テーラーと川上から川下までに身を置いてなんでも経験したことが財産だと思っています。

広く浅くだからプロじゃないというのは違うだろうと思っています。素材のこと、生地のこと、縫製のこと、全体のスタイルのこと、洋服の歴史のこと、それこそファッションそのもののことも。すべて知っているからお客さまと会話しいろんな質問に答え、難しい要望にもお応えすることができるんです。広く浅くということこそお客さまの注文に合わせた服をつくるテーラーという仕事には重要なんです。
オーダーというのは普通のお店とは違って、守備範囲が広くないといろんなひとに対応できません。いろんなお客さまが来られますからね、ときにはとんでもないオーダーをする方もいらっしゃいます。でも、うちはそんなのはつくれませんとは言えませんし、来られたお客さまを拒むことはできません。うちにはうちのハウススタイルというものがいちおうはありますが、なんでもできるのがテーラーです。それこそがテーラーとしてのプロの誇りではないでしょうか。「Be spoken=ビスポーク(話しながらお客さまの注文にこたえる)」と言われるテーラー(ビスポークテーラー=オーダーメイドテーラー)の真髄ですね。
こんな考えに至ったのは、わたし自身の生い立ちや経歴が強く影響しているのかもしれません。わたしの祖父はテーラーをやっておりました。父は祖父のもとに入ったのですがのちに、テーラーに生地を卸す商売に家業を転換させています。そして、わたしがまたテーラーをはじめました。ちなみに母方の祖父もテーラーでした。その時代のテーラーはまちにはどこでも必ずあるような、珍しくもなんともない仕事だったんですけどね。ですから、わたしという人間はとても由緒正しいDNAを持ったテーラーなんですよ。(笑)

メンズファッションというのは、
“埋蔵物の発掘”のような世界なんです。

プロの目や技というところへ話を戻しますと、メンズファッションというのは新しいものは何もないんですよ。過去を掘り起こしているだけです。
ただ、遺跡の発掘と同じかというと、古代史の研究と違うのは発掘してアレンジしているんですよ。わたしはどんな方法で発掘しているかというと、文献を紐解くことももちろんやっていますが、古い洋服をどんどん買っています。海外のオークションをよく利用しますが、わたしが住んでいるあたりにも若いひとが買いに来るような古着屋さんがけっこうあるんですよ。そういうところはビルの中にあって入店しにくいんですけど、いろいろ面白いものに出会えます。
買って、着て、どうなっているのかを調べてみます。そういう発掘調査も、“広く浅く”なわたしの知識の幅を広げてくれていると思います。

よく言うのですが、服づくりには「3つのC」が必要です。ひとつ目のCは「Cloth(服地)」です。こんな着心地だとか、こんな用途に使うものだとか、服地に対する知識と経験です。ふたつ目のCは「Cutting(パターン)」です。服の原型とも言える型紙、設計図ですね。みっつ目のCは「Comfort(着心地)」です。
わたしはこの「3つのC」の間をウロウロして、お客さまと対話し職人にお客さまから聞いた感覚を翻訳して(いわば数値化ですね)伝えているわけです。まさに遊撃手ですよ。あともうひとつ付け加えますと、テーラーは“聞く”ことが大切です。そこが、対話やコミュニケーンをベースにしたテーラー(ビスポークテーラー=オーダーメイドテーラー)の真骨頂であり、来店されるお客さまにとっての楽しみでもあるはずです。ほら、床屋さんだって、髪を切ってもらっている間にいろいろ話すでしょ。ま、いまは、スマホの画像を持ってこられる方が多いので聞くのもずいぶんラクになっていますけどね。

いかがでしたか?こんなことで「プロの目、プロの技」の話になっていましたか。わたしの話そのものも、どこまで行っても“広く浅く”でしょ?(笑)

―と言いながら、石田原さんは店内に置いてある古いジャケットやコートのコレクションをいろいろと見せてくださいました。これも、発掘調査の成果だそうです。最初は「ひとに誇れるものなんか何もない」と言われて話がそれで終わってしまうのかと冷や汗ものでしたが、さすが“Be spoken(話しながら要望にこたえる)”の達人。いつの間にかその話の面白さにひき込まれてしまいました。プロの目やプロの技の話をたっぷりと聞くことができました。
本日は、どうもありがとうございました。

インタビュー&ライティング 田中有史

※写真撮影時のみマスクを外しております。各店舗とも適切な感染症対策を実施しております。

ALTISTAアルティスタ

基本に忠実な王道のイタリアンが楽しめるイタリア料理屋さん。「安心、安全、美味しい」をコンセプトに、素材や調味料を厳選した料理を追求している。いろんな国の方が暮らす六甲アイランドで幅広い層から支持を集める。広い空間でゆったりと食事の時間が楽しめる。

神戸ファッションマート 1F

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皆さんがふだんよく使っているのに、
意外とちゃんと使えていないのが
ニンニクなんです。

シェフ 中村泰一郎さん

21歳から料理の世界に入った中村シェフ。東京、神戸などのイタリア料理店で修行をしたのち、29歳で「アルティスタ」にシェフとして迎えらえた。自身がワイン好きなのでワインに合う料理を出したいと言う。とくに夜は料理とワインを楽しみに来ていただけるような自慢のメニューを用意している。

―はじめまして、中村さん。
ランチタイムが終わってホッとひと息ついていらっしゃるところにお邪魔します!
きょうはですね、ぜひとも長年のシェフとしての経験や視点から、「これぞ、プロの目、プロの技」というお話をたっぷりとお聞かせください。
では、よろしくお願い致します。

魚や肉の選び方や扱い方、包丁や調理器具の種類や使い方、それこそ家庭ではできない味付けや盛り付けなど。プロならではの目や技はたくさんあるんですけど、今日は何を話そうかなあといろいろ考えた結果、ニンニクのことを話してみようと思います。(えっ、まさかのニンニク??でも、まさかだけにプロにしかできない話が聞けそう。ワクワク、ワク。)

たとえば「プロの目」と言うと魚の目利きの話なんかが良いと思うかもしれません。でも魚の目利きって奥が深すぎるんです。鮮度はもちろん大切ですが、いちばんは締め方なんです。野締め(のじめ)といいますが、釣ってすぐに船上で締めるやり方は活きが良さそうだけど、じつは雑な締め方と言われています。だから、うちではそういう締め方のものは扱いません。魚は明石で魚屋をやっている友人から買っています。ミシュランの星を持つ店から注文を受けるような店なので、もう完全に任せています。魚の締め方の最先端は明石にあると思っています。そんな世界を料理人の僕が語ってもねえ。
逆に肉だと牛でも豚でも鶏でも、いまはブランドを選べばそれでいいようになっていますよね。だから、逆にそんなことを語っても面白くないでしょ。
と、言うわけでニンニクの話をします。

ニンニクは断面が多いほどニオイがきつくなります。

でも、アマチュアの方はそんなことを意識して使っていないでしょう。ニンニクってたくさん入れると臭くなると思っていませんか。じつは、それは誤解です。ニンニクは丸のままだと舐めても匂いません。味も辛く感じないはずです。もう一つの誤解はニンニクの効果です。じつはニンニクの香りを料理に付けるために使うのではなく、素材の臭みを取るために使っているんです。
食材はだいたい断面が多いほど臭うものだし、辛くもなります。ですからニンニクは擦るといちばん匂いと辛みが出ます。次は微塵切りです。スライスすれば微塵切りよりも香りや辛みは弱くなります。

そして「インテーロ」と言いますが全形で使うやり方がいちばん刺激の出ない方法なんです。包丁の刃を寝かして潰して使ったりしますが、あのやり方だとあまり臭みや辛みが出ません。ニンニクを丸のまま牛乳で煮ると匂いのない美味しいポタージュになります。コンフィと言いますが低温の油でじっくり加熱するとじつにまろやかな味わいになります。
こんなことを知っていると他の素材にも応用できます。パセリはわざと荒く刻むんです。すると、香りが立ってハーブ(香り付け野菜)らしく使えます。われわれは粉の胡椒を使いません。黒胡椒をミルで粗挽きにします。粗挽きすることで、粒を口の中でもう一度噛むから香りが出て美味しんですよ。(なるほど!ニンニクだけでなく、パセリや胡椒にまでプロの技があるじゃないですか!)

料理は表現です。
基本は好きということに尽きるでしょうね。

食材のちょっとした使い方の話をしましたが、僕に“ゴッドハンド”さえあれば、そんなことも必要ないかもしれませんね。
あるひとが言っていましたが「食材はふつうでも、僕がやると美味しくなるんです」「混ぜ方やつかみ方で味って変わるんです」これって、まさに“ゴッドハンド”ってことですよね。時間や量を計らなくても、食材を混ぜているときに「ちょうどこれくらいかな!」とか「いまかな!」ってわかる感覚というか直感なんでしょうね。こういう話を聞くと刺激されますよね。
料理は表現ですから、同じ料理をつくってもひとによって変わるものです。だから日々の鍛錬や、ふだんから勘を働かせることで、よく使う部分が伸びるように直感が育っていくんでしょうね。料理をしている最中の“いま!”という直感を積み重ねていくことで料理人としての成長や、結果としての料理が大きく変わっていくだろうと信じています。
やっぱり料理が好きですから、まだまだじぶんを鍛えて行かねばと思っています。じぶん自身のカラダも手も勘も舌も、いろんなところをよく使うことで“ゴッドハンド”を追求していきたいですね。

いままでも、これからも。
向上心を持ってやりたい。

25年間料理をやってきましたが、惰性で料理をつくったことは一度もありません。時間があれば本から情報を吸収しますし、食べ歩きもやります。そうやってひとにインスパイアされる(感化される)ことは多いです。食べることが好きなお客さまにはお喋り好きの方が多いです。タメ口で喋ってくるような気さくなお客さまと話すのは楽しいです。感想をお聞きするのはとても参考になりますから。
そうやって何度か喋っているうちに常連になっていかれる過程も楽しいものです。本にしろ、食べ歩きにしろ、お客さまとの会話にしても、仕事と趣味が一緒になったみたいなゴッチャになっているカンジが好きとも言えます。そうやって意識して後天的に目や技を鍛えています。ええカッコ言い過ぎかもしれませんが、これまでもこれからも向上心を持ってやっていきたいと念じています。

―ということで、ランチタイムを終えてディナータイムの準備がはじまるまでの貴重な時間に貴重なお話を伺いました。そしてトクベツにプロの仕事場であるキッチンも案内していただきました。想像どおり清潔で想像以上に広いスペースでした。まな板がたくさんあるのは、魚、肉、野菜などによって使い分けているそうです。そしてダスターも素材ごとに専用にして、漂白や煮沸も徹底しているとか。
こんなところも当たり前そうで、プロの目プロの技に通じるところがありますね。本日は、ありがとうございました。

インタビュー&ライティング 田中有史

※写真撮影時のみマスクを外しております。各店舗とも適切な感染症対策を実施しております。

ラグ&カーペットティーズ

店内にはペルシャ絨毯、キリムが所狭しとばかりに並ぶ。主にイラン革命以前のものが揃った様子は圧巻のひと言。展示を見て回ると、まるで博物館にいるような気分。気になった商品があればオーナーに質問してみよう。それぞれのストーリーを楽しく聴かせてくれるはずです。

神戸ファッションマート 3F

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けっきょくホンモノを知っているか、
ホンモノが集まってくるかなんです。

オーナー 玉木康雄さん

大学卒業後、百貨店の外商部に勤務したあと一念発起して退社。イラン人のもとで修行し約25年前に独立。特殊な世界であるペルシャ絨毯への造詣は驚くほど深い。そして独自の仕入れコネクションを持っている。とにかくその知識と経験に触れ、さまざまな商品を見るだけでもこの店に行く価値がある。

―こんにちは、玉木さん。
ペルシャ絨毯やキリムという言葉は知っていても、果たしてそのルーツや定義もわかりません。かなり奥が深い世界だろうと思います。今日はわれわれシロウトにもわかりやすく、ペルシャ絨毯にまつわる「これぞ、プロの目、プロの技というお話を楽しみにしてお邪魔しました。
まずはなぜ絨毯の世界に飛び込まれたのか、そのあたりから今回のテーマへと話を進めていただけたらと思います。では、よろしくお願い致します。

百貨店の外商にいましたから、ある意味“モノを売る”ことしか知らなかったんです。百貨店を辞めて、さて自分で何かをはじめようと思ったときに、高価なものの扱いには慣れていたので絵画とか宝石とかいろいろ考えたすえに、絨毯が良いと思ったんです。

どれだけ枚数を見ているか。
わかりやすく言うと、そういうことになってしまいます。

いまのようにじぶんで商売をする前に、イラン人のところで修行をしました。
ある有名なペルシャ絨毯の専門商社に入ったわけです。そこにはたくさんの絨毯がありましたから、現在のペルシャ絨毯はもとより古い時代のものも含めてものすごい量の絨毯を見ることができました。その経験がいまに生きていると思います。“プロの目”に行き着くまでには、とても時間がかかるものです。どれだけの枚数を見るか、そこに尽きると思います。
本物のペルシャ絨毯がまだそのへんにはない時代でした。でも、その会社ではイラン革命以前のものがたくさんありました。本物を知らないと本物以外も分かりませんし、見分けもつきません。例えば日本ではシルクの絨毯が軽くて柔らかくて艶もあって人気です。
でも、イランは羊毛文化の国なんです。ウールは2000年以上前からあります。シルクは高級だけど歴史が浅いんです。そういうことを知っているかどうか、そうでないと“プロの目”があったとしても…という話になるんですよね。

絨毯のプロフェッショナルである“砂漠の商売人”と
いかに付き合うかも欠かせない要素です。

よく絨毯のお店の広告で「オーナーが自ら現地を訪れて」などと言っていますよね。でも、何百と積まれた絨毯の山からどうやって良いものが選べるかも大切ですし、さらにはどうやって交渉するかという話が大切なんです。縁であったり運であったり、いろんな条件が重なって良い協力者と出会わないと良い商品を安く手に入れることはできません。相手はどうにかして高く売ろうとしてくるわけですから、いくら“プロの目”があったとしてもそれだけでは良い絨毯を扱うことはできません。逆に相手に“プロの目”があればあるほど安く売るわけがありませんでしょ。砂漠の商売人の手強さは島国の商売人の比じゃないですからね。どうにかして相手を負かしてやろう、少しでも値切ってやろうという態度では絶対に勝てません。同じ絨毯好きとして付き合えば、とても良い関係性が築けると思っています。
先ほど申しましたけど、「良い協力者なし」では、良い仕入れはあり得ません。うちの店は、あるバザールに良い協力者がいます。変な話し、わたしは仕入れに行かなくなってもう17年になります。「オーナー自ら現地には出掛けません」というスタイルなんです。(笑)
うちの協力者が毎日仕入れをしてくれて定期的に送ってくれるんです。そのひとはプロフェッショナルだから良い絨毯を知っていて、「玉木になら売って良いよ」と、あの手この手で集めてくれるんです。
今日のテーマで言うと、選ぶのは“プロの目”であり、良い協力者に恵まれたり、交渉するのは“プロの技”ということかもしれませんね。

お客さまに合った提案ができるかどうかも
プロなんです。

“プロの技”に関してもう少し申しますと、うちには「お客さまの住まいに合った提案ができる」という強みがあります。「あなたのお家の玄関ってどんな玄関ですか?
というところから入って絨毯を提案していきます。だから、店に来て選んでいただくだけでなく、「持って行って合わせましょうか」というやり方なんです。行商人のように絨毯を車に積んでお客さまのお宅まで訪問するわけです。これはもう、相当お節介な店ですよね。(笑)
設計の段階からご相談いただくケースですと、アナログな絨毯の縮尺モデル(ほら、これです。と、見せていただいたのは自社の絨毯を設計図の縮尺に合わせたサイズにプリントして切り抜いたもの)で着せ替え人形のように住宅の設計図と合わせながら、いろいろの組み合わせパターンをお見せして決めていくんですよ。
もしもじぶんがこの家に住んでいるなら、ぜったいにこれを敷くぞー!というのを薦めているんです。このやり方は“お客さまのフトコロを考えないことが玉に傷”だとじぶんでは思っています。でもそれが、楽しくて仕方がないんですよね。

▲絨毯の縮小モデル

同じ価値観のお客さまが
集まってくるのも大事です。

わたしはクルマが好きなんですけど、家に行ってこんな絨毯を合わせたというのは覚えているけど、お客さまの顔を覚えていなかったりするんですよ。お客さまを家と絨毯とクルマで記憶しているわけです。
クルマは古いものが好きなんです。どうもスーパーカーのように最新のキラキラしたものは苦手なんです。モノの背景や歴史に惹かれるんですよね。そのせいか不思議にお客さまも古いものが好きなひとが集まってきます。
絨毯もアンティークが好きです。うちには100年以上も前のものがあったりします。お客さまにも同じ価値観の方が多くいます。分かり合っているひとでないと違和感があるでしょ。そうすれば、お客さま同士も違和感のない空間を共有して楽しんでいただけると思ってます。そうやって、同じ価値観の方のインテリアの完成度を高めたり、趣味のコレクションを満たすお手伝いができる存在でありたいと思っています。

―まだまだ話は尽きないのですが時間の関係で、このあたりでインタビューは終了。でも、このあと店内にある貴重な絨毯をいろいろとお見せいただき、それぞれにまつわるストーリーをたっぷりと聴かせていただきました。延長戦も含めて、本日はありがとうございました。想像以上に深い「これぞ、プロの目、プロの技」に触れることができました。読者の皆さまもぜひ、お店で玉木さんのお話をお楽しみください。

インタビュー&ライティング 田中有史

※写真撮影時のみマスクを外しております。各店舗とも適切な感染症対策を実施しております。

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