代表取締役 稲田惠美さん
アパレル会社で店長と新入社員指導員を約10年。海洋建築専門会社で経理責任者を約10年。豆雑穀卸し会社で経理責任者を約8年。家具製造会社ティシュラー夙川店で責任者を約3年。数々の重責を担った後、ティシュラー製品の販売代理店として独立した。令和元年に六森をOPENし、現在に至る。
Q:素材や味など、この店流のこだわりはどこにありますか?
稲田さんとお話していつも思うのは、話はかなり取り散らかるのだけれど、いつの間にか本来の場所に戻ってきているということだ。直感力の強い方なのだろうな。話しているうちに、本来の道筋が見えてくるのかもしれない。そして、ひとの輪がこのひとのまわりで自然に繋がっている。それは、なぜだろう。「こだわりがこだわりを呼ぶ」ということではないだろうか。今回も、この店のこだわりを聞きするはずが、家具ショップが調理スタッフをどうやって見つけて来たのかという入口から、いつのまにか「この店のこだわり」というゴールに到着した。さて、どんなお話の経路でゴールまでたどりついたのか。乞うご期待。
A:飲食店の家育ちなので、わたしが美味しいと思うものしか出さないんです。
稲田さん:もともと夙川で家具をやっていて、新しい店をここに出そうかとなったときに、「家具だけだったら面白くないよね」って言われて、じゃあ飲食も。となって、いまのシェフに来てもらうことになったんです。わたしは飲食をやったことがなかったので、行きつけのバルのシェフだった彼にお願いしたわけです。飲食をやっているひとって、やっぱり飲食をやっている仲間が多いので、そのひとたちにアルバイトに来てもらって、飲食をはじめました。あとは、ケーキだけじゃなくて本格的にパンも焼きたいというとパンをやっている友人が助けてくれました。野菜をやっている友人もいたし、わたしは知り合いが多いものですから、わたしが飲食店をやると言ったら、手伝うよーという流れですね。それは飲食もリフォームも同じで、わたしの場合は友人の輪で繋がっていくんですよ。パンを焼くひと、無農薬の野菜をつくるひと、お米農家の友だち…と、横繋がりの紹介で、ひとつやると言ったら、知り合いが繋がっていくんです。一から探すとなると、やはりちょっと難しいですものね。そういうと、繋がりだけですべてできてしまうと思うかもしれないけど、そうじゃないんです。じぶんの目で確認したものを毎朝買いにも行きます。たとえば、いまだったら昼の限定ランチにお豆腐を出したりしています。その豆腐一つでも、何でも良いというわけではありません。わたしの好きな豆腐屋さんが、朝からつくったものを出したいんです。だから、毎朝市場へ行きます。大安亭(おおやすてい)市場や水道筋のように安くて新鮮で、いまでも昔のままの活気を残しているような市場が神戸にはまだ残っています。そういうところで、店が使う材料を買ってきます。
うちは、ひと言でいうと「昼間の深夜食堂」みたいな感じかな。メニューは多くないけど、定番のメニューはハンバーグ、
ローストビーフなどのほか、10食限定で週替りランチもあります。そんなにコロコロ変わりませんから、常連さんにはハンバーグの材料を変えるとか、ソースを変えるとか、個々への対応はよくやっています。ハンバーグなどはソースをいろいろ変えれば、ものすごくバリエーションができますからね。毎日のように来られる方には、昨日は何を食べましたか?今日はこうしましょうかという感じでの対応ですね。そういう意味でこの広さの割に、うちはかなりお客さまと距離が近い店だと思います。わたしもシェフもそうなんですけど、感覚的にはワンオペに近い状態でやりたいのが本音なんですよ。一人ひとりの要望を聞きながら、対面でやっているぐらいの感覚ですね。

メニューは繰り返して出しても飽きないものにしてほしいとスタッフにはお願いしています。自分たちの店のものをスタッフが毎日食べても飽きないというようなものを出していかないと、スタッフが飽きているようだとお客さまは見向きもしてくれませんよね。コーヒーだってそうですよ。じぶんたちが一日に何回飲んでも飽きないような味を目ざしています。
いま言ったようなことに、すごくこだわっていますね。それが、この店流のこだわりということです。毎日来られる方も多いですからね。決まった時間に来店して、いつもの席に座る。そんな方に飽きられない存在であり続けるように、これからも対面感覚、ワンオペ感覚にこだわっていきたいです。うちは、このメニュー1本で勝負というような店ではないですからね。丁寧に仕事をして、それこそ出来合いのものは使わないというようなスタンスでやっていきたいです。

この店のこだわりの正体がわかりました。じぶんの感覚を信じながらも、一人ひとりに合わせて丁寧に接するということですね。六甲アイランドもこれからは住む年代層も変わっていくでしょう。マスではなく一人ひとりのニーズにちゃんと丁寧に合わせていくということですね。それによって密な顧客が増えていけば、お店としては盤石ですね。どこを変えずにいるのか。どこを変えていくのか。稲田さんの舵取りを楽しみにしています。
インタビュー&ライティング 田中有史