シェフ 中村泰一郎さん
21歳から料理の世界に入った中村シェフ。東京、神戸などのイタリア料理店で修行をしたのち、29歳で「アルティスタ」にシェフとして迎えられた。自身がワイン好きなのでワインに合う料理を出したいと言う。とくに夜は料理とワインを楽しみに来ていただけるよう、ワインとよく合う自慢のメニューを用意している。
Q:うちの料理と合うワインとは?
インタビューのためにお邪魔したときは、ランチ営業が終わりシェフもスタッフの皆さんと一緒に、ちょうどまかないを食べ終わったところだった。あれ、ワインは?残念ながらワインなしの食事だった。イタリアやスペインだと、とうぜんワインありで、その後に昼寝なんかしちゃうんでしょうけどね(笑)。ということで、ご用意してくださったコーヒーをご馳走になりながら、ワインの話へと進んでいきました。さあ、話に酔うぞ!
A:イタリア料理は、ワインを飲むのが大前提ですからね。
中村さん:今日はイタリア料理とワインですか。やっぱりワインを飲むのが大前提というのがイタリア料理ですからね。ワインは食中酒として最強だと思います。僕がワインを選ぶ基準は“ひと”ですね。生産者という意味のひとではありません。“ひと”から買うということ。つまり、信用しているひとから買うという意味です。信用の元になるのは目利きです。取り扱っているインポーターごとにワインの方向性があります。だから、このひとが選んだものなら大丈夫という基準は大切じゃないでしょうか。ぶどうを育てるひとがいて、醸造するひとがいて、運んでくるひとがいて、そういう何十社というメーカーからセレクトして品揃えするひとがいるわけですよね。
いわば、ワインを愛するひとたちがバトンリレーのようにしてやってきたものが、われわれの口に入るわけです。ワインは本来美味しいものです。そして、デリケートなものでもあります。トラックで運んでくるときの状況やコンテナに積まれる前の保管までを、買う人間が追求できるわけではありません。だからこそ、「このひとなら」「このひとが選んだものなら」という基準を僕は信じているのです。
買うときはワインショップへ行くときもあれば、何度も取引をしていて信頼しているひとなら電話での相談で済ませることもあります。
僕の姿勢としては、うちのことを知っているひとが見て、背中が煤ける(うしろめたい)ことはしたくないですね。みんなが知っているものばかり揃えているのもダサい。いくら美味しいものでも、有名になりすぎてしまったものをいまさら仕入れるとダサい。そうじゃないですか。そう思うでしょ。名前なんかどうでも良くて、おっ、これ知らなかったけど美味しいじゃないか!と、言ってもらいたいんですね。安くて美味しい!が、サイコーですもんね。うちでいまいちばんのオススメは「アリアニコ」という南イタリアの赤。白なら北イタリアの「クストーツァ」です。ぜひ、いちど、味わってほしいですね。ちなみに、ワインはボトルで飲むものです。小さいボトルはダメージを受けやすいんですよ。コストがかかるからハーフボトルは割高になります。
うちの料理とワインの相性で言うと。ピッツアはもともとナポリで生まれたものですから、やはりナポリでつくられたものが合います。それも、炭酸気分で飲むような、微発泡性の安くて若いワインが合うと思いますよ。岩塩だけで味付けて炭火で焼いたような牛肉にはサンジェベーゼやキャンティを合わせるのが好きですね。明石の魚介や淡路の野菜には酸味のある白が無難でしょうが、基本にとらわれずいろいろチャレンジしてみてください。ジャケ買い的に気楽に選んでみてもいいんじゃないですか(笑)。
僕はワインを愛しています。赤も白も泡もみんな好きです。だから、じぶんが飲みたいものを買ってきて売っています。内緒ですが(笑)、売れてほしくないものは、わざと高い値段を付けているほどです。19歳のとき(もう時効)にバイト先で飲んだモンテプルチアーノが美味しくて、料理の道へ進もうと思いました。面接をいくつか受けたんですけど、なぜか受かるのはイタリアンばかりでした。モンテプルチアーノつながりで、縁があったのかな。料理ではワインは「最後の調味料」と、言われます。使うことで、酸味や風味を加えて料理が完成します。食卓にワインのある風景は絵になります。この店でも、みんながワインを開けている姿はカッコいいですもんね。そうなると、お客さまもインテリアの一部ですね。そんな風景をいつも眺めていたいです。

楽しい話、美味しい話しをたっぷりと聞けました。耳が満腹です(笑)。
デザートにもう少し内緒な話が聞けると、さらに良かったかもしれません。帰る道すがら、今日はワインが飲みたいなあ。家にたしかシャブリ(フランスですけど…)があったなあ。と、ワインの口になってしまったのでした。「ワインは最強の食中酒」。まさに!皆さんもぜひ、美味しい料理とワインのペアリングを楽しみに、このお店へGO!お店の風景の一部になってください。
インタビュー&ライティング 田中有史