取締役・デザイナー 香川世奈さん
アートの大学を卒業した香川さんは、じぶんの手でアート作品をつくっていた。しかし、お客さまのご希望に自身の感性を自由にプラスするような仕事がしたくて、現在の会社に入社した。楽しい仕事ではあるが苦労や手間も多くて大変。そのぶんやりがいを感じ、毎日が充実して楽しいと言う。
Q:プロが信頼するプロとは?
このお店は基本的にインテリアのプロをターゲットにしている。ただ、最終的なお客さまは、インテリアのプロの向こうにいる。さて、どうやって、プロの向こう側にいるエンドユーザーが求めているニーズをつかむのか。どうやって満足してもらうような作品に仕上げるのか。きっと、この店あるいは香川さん一流の方法論があるのだろう。今日は、「プロが信頼するプロ」という、ある意味この店の魅力の本質に迫ってみたい。取材ではいつも、豊富な納品事例からおもしろい(高難度な)事例のお話を聞かせてくれる。おもしろい事例をたくさんお持ちというところに、プロが絶大な信頼を寄せる、この店のオリジナルな魅力があるのだろうと、想像している。
A:お客さまのイメージを聞き、作家に伝え、サンプルから提案していくので、インテリアのプロが使いやすい。
香川さん:そうですね。うちの場合は基本、インテリアのプロにアートとフレームを提案する店ですから、実際の仕事を例にお話しましょう。最近手掛けたあるまちの駅前高級マンションの事例です。じつはそのまちは市の花が紫陽花だったのですけど、そのマンションのエントランスホールに紫陽花をモチーフにした大きなシンボルアートを飾りたいというご依頼でした。ご依頼主としてはディベロッパーとインテリアコーディネーターの両方ということになります。マンションの入口のメインの場所ですから、幅が2400cm、高さが1200cmという、大きなものをご希望されました。市の花が紫陽花だということをだれもが知っているわけではないので、どんなものにしていけばシンボル的なものになるのか想像がつきません。それに、最初から原寸大のものをお見せできるわけでもありません。まずは作家を決めないと前に進めません。こちらで今回のイメージに合いそうな作家をチョイスして、HPやカタログをお見せしながら作家を決めていきます。
今回ご紹介したのは韓国のアーティストです。スケッチを作家にお願いして仕上がりのイメージを描いてもらいました。作家が描いてくれたスケッチはモチーフがわかる程度の20cm角くらいのものでした。さらに、色のご提案としてブルー系とパープル系の2方向であげてくれました。いきなり完成形を仕上げていくのではなく、作家を決め、こんな感じという仕上がりイメージのスケッチで方向性を決めます。今回はシンボリックな立体作品にしたいから、ミニサイズのサンプルをつくってもらいました。それをお客さまに見せてご意見をお聞きし、作家にフィードバックします。修正したものでOKをいただき、本番へ進みます。金額も高いので、確認と納得の積み上げは大切です。
オリジナルアートなので制作には4ヶ月くらいかかりました。サンプルのとおりにならない場合もあります。そんなときは、作家を説得して、お客さまが気に入るように変更してもらいます。けっきょく、お話をお聞きしてからですと約半年かかりました。

このようにスケッチやサンプルをお見せしながら進めていくので、インテリアデザイナーもお客さまにコンセンサスをとりやすいのでしょうね。だから、うちはプロが使いやすいと思います。今回の作品は色をコントロールしにくいものでしたので、最終的にはお客さまの声で色を変更してもらいました。場合によってはサイズの変更もお受けしています。仕上げは額でもパネルでもご希望に合わせることができます。「ほら、アートの中に立体的な丸い粒が見えるでしょう。これは雨を表現しています。紫陽花は梅雨時のシンボルですからね」と、香川さんが自信ありげに説明を終えた。

こちらのアート作品は、今回ご紹介いただいたようなランドマーク的な建物に採用されることが、意外に多いそうだ。建築のデザインそのもののシンボル性はもちろん、そこに飾られるアートもランドマーク(地域の象徴、シンボル)となる。住むひとの誇りとなり、訪れるひとの憧れとなるアート。それにより、住まいの価値もあがるだろう。だからこそ、この店は「プロに信頼されるプロ」である。と、いうわけだ。今後も、まちのランドマークをたくさん手掛けてほしいものだ。
インタビュー&ライティング 田中有史