取締役 山口小百合さん
父であるゼネラルマネージャーの山口和弘さんは、約30年前に中国でOEMによる木製品の製造・販売をスタート。日本国内の製造小売業(SPA)に卸してきた。SPA業界と取引するビジネスの先駆者でもある。小百合さんは父和弘さんの会社で働いてきたが、自社ブランド「KIITASU」を立ち上げ、ブランディング活動に従事している。
Q:おもちゃの店にとっての理想は?
入口にドーンと設えられた大きな木製のプール。ここに集まり、ワイワイ楽しそうに遊ぶ多くの子どもたち。とうぜん、理想は 「多くの子どもたちが集まってくれるお店」という答えが返ってくるものと勝手に思っていた。でも、山口さんから返ってきたのは、予想に反して違う答えだった。でも、聞けば聞くほど、なるほどなあと思えるものだった。そういう大きな視点というかビジョンがあるから、このお店は短期間で認知度があがり、多くの人たちに知られるお店になったのだろう。さて、その答えは?
A:大人にも愛されるようなお店になりたい。
山口さん:ご覧いただいているとおり、ここは木のおもちゃのお店です。入口に大きな木のプールがあって、子どもたちが喜ぶような仕掛けがいっぱいです。では、ターゲットは子どもたちなのか?というと、おもちゃのお店って、じつはそうではありません。ご両親や祖父母こそがターゲットでもあります。うちの場合、ネットショップはあっても、実店舗はここだけです。ですから、まずはここに来ていただきたいです。それがきっかけで、「ファンになった」「月に一回くらいは通いたい」「孫のプレゼントを買いたい」という方が増えてくださることを願っています。うちの商品はデザインや色にこだわっています。
インテリア映えするからと大人が買ったおもちゃで、子どもたちが自然に“ごっこアソビ”をしてくれたらと、思っています。調理のマネごとをするようなことでも良いですし、パーツとパーツを自由な発想で組み合わせて創作物をつくりだしたりしてほしいものです。大人と子どもでは人気の商品も変わります。大人に人気があるのはブドウです。ブドウを木でつくるのは大変ですが、うちの商品は房がクルクル回るようにできています。子どもたちに人気なのはソフトクリーム、包丁、スプーンなどです。手に持てるところ、握れるところが良いのだと思います。子どもたちには、手から離さないということの重要性を覚えるきっかけにもなります。 六甲アイランドにお住みの方同士なら学校での顔見知りも多いので、「うちの子が5時にキータスで約束したって言うもので…」と、お母さんたちと一緒に集まってきたりします。
木製玩具というものは、ベタ塗りするのは比較的ラクです。でも、うちの商品は派手なベタ塗りをせずに、絶妙な塗装で仕上げてあります。ここまで来るのには、ずいぶんと試行錯誤を繰り返し、やっと安定した色が出せるようになりました。最近は大人の方にも、ホンモノの木のおもちゃへの回帰が見られます。たまごっちやシルバニアファミリーなど、当時はじぶんで自由に買えなかったものを、大人になってからじぶんのお金で買う楽しみを味わっておられるように見えます。そういう意味では、キータスは「大人にも愛されるオモチャづくり」に取り組んでいると言えます。うちは父の長年の経験から、どうしたら安くなるかは知り尽くしています。でも、いまの世の中には、安いものはいくらでもあります。いまやっと、わたしが思うものをつくれるようになったこともあり、これからはつくるのに手間と時間がかかるものにも取り組んでいきたいです。ゲーム性であったり、本来の目的とは別の要素を組み合わせたり…。アイデアはいろいろとひろがります。
最初はこんなに多くの方が来てくださるとは、思ってもいませんでした。休日や夏休みなどには朝から親子連れが並びます。店舗があることで、お客さまが見る、触る。商品のことをいろいろと話す。あるいは企業との物づくりの場にもなる。じつにさまざまなことが起こっています。それもこれも、大人にも愛されるオモチャづくりをしているからこその効果だと思います。今後も、いまのこのスタイルを貫きたいです。大きな目標として、「木育」というカタチで世の中に貢献していきたいですね。

なるほど、子どもはもちろん、“大人にも愛されるおもちゃの店”って、大事なことですよね。子どもたちだけを見ていたら見えないことも、大人を見ていると見えてくるということかもしれませんね。本当のターゲットとは、実際におもちゃを使う子どもたちだけではない。なんだか、ものごとの本質に気づかせていただいた取材でした。
木育。木がいろんなものを育ててくれるわけですね。
インタビュー&ライティング 田中有史